安全衛生マネジメントシステムがその管理下で働く全ての人たち及び、その他の害関係者(客先等)からの 要求事項や世間動向、監査結果等を踏まえた継続的な運用改善(スパイラルアップ)を図って行ける ”しくみ”を持っているからです。
2.3種類のマネジメントシステム
次の呼称のものがあります。
@ OHSMS →「Occupational Health&Safety Management System」
A OSHMS →「Occupational Safety&HealthManagement System」
B COHSMS →「Construction Occupational Safety&HealthManagementSystem」
※1 労働安全衛生法第30条における「特定元方事業者等の講ずべき処置」の中の“労働者及び 関係請負人の労働者・・・”及び、労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針の中の 第4条“・・・・ただし、建設業に属する事業の仕事を行う事業者については、当該仕事の 請負契約を締結している
事業場及び当該事業場において締結した請負契約に係る仕事を行う事業場を併せて 一の単位として実施することを基本とする”との記述があります。
この記述の意味からすると、その事業所の中で、
・ ”仕事内容を用い、OHSMSを運用しなさい”、
・ ”そうするように支援しなさい”、
・ ”この運用を通じ事業所(企業)とその労働者(従業員)の 労働安全衛生の質と力量の向上に資するよう努めなさい”
と解釈するのがスジで、関係請負人の運用をコントロール(統制)する事と、 マネジメントシステムを運用している事と同一では無いと考えるのが 実際のところでしょう。
特定元方事業者のマネジメントシステムと関係請負人のマネジメントシステムは 別もので、“・・・・を併せて1単位として実施することを基本とする”という記述を “枠組み、土俵”として、解釈することが妥当なところです。
「OHSAS18001」、「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」、 「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」それぞれ、特定元方事業者を含め事業者と 労働者(従業員)の関係の中での構築が基本で、「ISO9001」「ISO14001」と同じ 運用をしなければ、認証取得が出来ないということになります。 そういう意味で、ISO9001やISO14001のような認証取得が出来ないために 独自認証機関を持つCOHSMSは、特定元方事業者の従業員(労働者)を通じ、 関係請負人のマネジメントの実施結果でコントロール(統制)するシステム体系と 考えるのが妥当なところです。
過渡期段階とは言え、経費の付け回しみたいなものになっているようで、現に、 特定元方事業者(ゼネコン)の従業員(社員)のマネジメントの向上事例、 その従業員(社員)の事業場での業務についての“リスクアセスメント”の実施事例 (事例公表)を見たことが無いことからも言えるかもしれません。 良い表現ではありませんが、“力を入れて実施している”という“外づら”を良く見せるた めに、担当部署が社内展開していると聞いたことがあります。
結果、書類は立派、業者は次回(次の)現場で、同じものを作成するそうです。
向学のために、特定元方事業者(ゼネコン)がどんな内容の目標(業者のではない)を 立てて、どんな実施計画を立てて、活動の結果、特定元方事業者(ゼネコン)の従業員の” マネジメント力”が改善され、それを受けて、目標を改善・ステップUPしたかを見せて 頂きたいものです。
労働基準法(定義)
第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所 (以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
第10条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の 労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者を いう。
「ISO9001」「ISO14001」に続く第3の規格としてOHSAS18001が開発されましたが、 現状ではISO規格としての「労働安全衛生マネジメントシステム」の国際規格は存在していません。
しかし、「ISO9001」「ISO14001」の普及も相まって、企業にとって避けられないCSR(企業の社会的責任) 及びコンプライアンス(法の遵守)という社会的機運、「労働安全衛生」の問題をどうマネジメントして行くのか という”課題に直面した時、”ISOの持つマネジメントシステムを道具として使って行こう”との高まりと ともに、認証取得へと動きだし始めたところです。
OHSAS18001を認証規格として、”QC,TQC,TQM”の総本山である「日本科学技術連盟」をはじめ、 第3者機関による評価サービスや認定事業等が開始されております。
OHSAS18001は規格の名称で、OHSMSの検証、評価指針としての位置付けになります。
実際のパフォーマンス評価のために重要なのは基準作りで、効果のある継続的運用のキーポイントとなります。
※2 OHSAS18001=日本(現在の厚生労働省)も含めた23カ国自主連合が 1999年に「認証のための国際規格して制定され、2007年に規格改訂が行われ、 OHSAS18001:2007版になっています。
OHSMS導入の意味は、
・ 労働安全衛生法」の第一条(目的)をより確実にする
・ 従来の枠組み(建災防、中災防)をより効果的に運用する
・ その枠組みの有効性の確認・検証及び改善
の新たな”しくみ”として、期待出来るからです。
また、このOHSMSが、労働安全衛生の運用水準の「均一化」と「継続的向上」に向け、枠組み(システム)の 見直しやその管理下で働く全ての人たち及び、その他の害関係者(客先等)からの要求事項や世間動向、
監査結果等を踏まえた継続的な運用改善(スパイラルアップ)を図って行く”しくみ”を持っているからです。
労働安全衛生法基準法(目的) 第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、 労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び 自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な 対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保する ともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
OHSMSのリスクアセスメントは、心臓部にあたります。基本的には、
・環境マネジメントシステム(ISO14001)における”環境側面の特定”
・品質マネジメントシステム(ISO9001)における”品質側面の特定”
と同様、”安全衛生側面の特定”にあたるものです。
リスクアセスメントは、過去に発生した災害事例と過去数年分の災害パターンを分析し、ランク付け又は、 数値化することによって、評価(アセスメント)可能な結果を活用し、全体(共通)の安全衛生の 目的・目標の達成計画のためとなる材料を抽出するためだと言えます。
そのため、新規作業や作業方法の変更に対してもその材料を活用し、その材料(フィルター)を通し、 「リスクを有する危険有害要因」の事前評価及び再評価を行い、その結果を踏まえ、 職場の安全衛生目標と計画を作成することが大事になって来ます。
作成した安全衛生計画に基づき、潜在的な危険性の除去・低減を図って行く事に意味があると言えます。
監査は、毎年少なくとも1回は実施するようにします。
組織に於ける運用情報の収集・分析、監視・測定及び評価・改善の活動記録を評価対象とする事により、 その評価結果をフィルタリングする事により、自ら決めた「安全衛生目的・目標」の達成度合いや、 PDCAサイクルの機能の有効性を計るためのものです。
また、外部機関による認証取得・更新・維持に関連し、年1回の割合で、マネジメントシステムの 妥当性や有効性、努力性などを評価してもらいます。
これらの監査を通じ、職場の「安全衛生の管理レベル」の改善とステップUPが望めます。
このことに、深い意義があるのです。