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くたばれ!ISO」     著者:森田 勝 より、

問題を隠さずさらけ出せ。
そうしないと審査を受審する意味がない
購入可能なサイトです⇒ くたばれ!ISO。

 ”ISOは、役に立たない”と喧伝する経営者は、「経営の高み」を極めることは無いだろう。
その組織は、政党に似て、その経営者を越えられない。悪いことにその経営者は、”裸の王様”じゃないが、自分が見えていない。

壁を超えるための方法は、4つある。
1.壁にぶつかり、1点突破全面展開
2.壁に沿って、万里の長城じゃないけど、切れ目を探す
3.壁に同化し、入り込む。そして、抜け出す。
4.壁と共鳴し、その壁を”動かす”。
  さて、皆さんはどうでしょう。1〜3はその意思を持ち続けるのは困難で、心が折れてしまいます。
残る”4”を考えてみることも必要でしょう



審査でいろいろなことを指摘されたくないという気持ちになるのは、なぜだろうか?

 それを是正するために新たな仕事が発生するから困るのか、
自分の仕事を評価されるような形になることに拒否反応を示すのか、
アンケートを取ったことがないから本当のところまではわからないが、
不備な部分はできるだけ審査員の目に触れないように隠しておこうとする気持ちが、
受審側に作用してしまうのは否定できないことだと思う。

 登録審査の場合は確かに指摘事項が少ないにこしたことがない。

 登録をされる条件として指摘事項に対する是正が完了していることがあるのだったら、
件数が少ない方がよりスムーズに初期の目的を達成することができる。
だからといって、
維持審査のときも同様に指摘事項を少なくすることを目的として、
問題を覆い隠そうとするならば、
それはISOに対するスタンスとしては問題があるのではないかと思う。

 ISOを経営改善のツールにしようとしているのだ。
改善の第一一歩は現状の分析をきちんとし、問題点を顕在化させることである。
問題点というのは、通常の見方をしていては発見できないものが、
ちょっと切り口を変えただけで明らかになったりするものだ。
組織に所属しない外部の人が見るということは、
ちょっとどころかだいぶ切り口を変えることになるから、
今まで全く考えてもみなかった問題が浮かびあがってくるかもしれない。

 自分たちでは気が付かなかった企業としての弱点を、他人によって教えられる、
それはそれで素晴らしいことではないか。 だからこそ、
審査員には経営者や管理者をはるかに上回る総合的な力量が必要になってくる。
単に規格要求事項との適合性の可否を判断することしかできないのだとしたなら、
そんな審査員は企業の側にとっては必要のない存在だ。

 考えてみて欲しい。
ISOは製品の品質までは保証するものではないから、
製品自体には認証の証である審査機関のマークや、
ISOの認証を取得しているような表現さえも表示してはいけないことになっている。
利益を継続的に出し続けることを目的として、経営活動をしている企業にとって、
品質の証というのはお客様に販売している商品そのものである。
品質を管理するシステムが構築されていることのお墨付きをもらったところで、
毎日出荷している製品の品質がめちゃめちゃだとしたなら、企業活動そのものが破綻してしまう。

 私が業務改善のお手伝いをさせていただいている中堅以上の企業は、
すでにISO9001もISO14001も何年か前に取得は終えている。
ところが、改善テーマとしては生々しい品質の問題が必ず含まれているのである。
そんなときには、
「ISOに面倒を見てもらえばいいではないですか」と皮肉を言ったりするのだが、
このように、ISO9001の取得と製品の品質のレベルとは必ずしも−致してはいない。
「ISO9001をベースにした品質マネジメントシステムが出来上がっていれば、
そこで設計し製造される製品の品質まで向上するはずだ」などという論理は、
「品質」問題の奥深さを知らない人の空論にすぎない。
だから、規格要求事項との適合性だけを追求してみたところで、

企業側のメリットになることは何も生まれないのである。

 審査員は、審査のときに、
コンサルタント活動になるような提言やアドバイスをしてはいけないと言われているようだ。
なかには、そのことを混同しないように、
組織を審査部門とコンサルタント部門とに分けた審査機関もあると聞く。
ISOを活用して企業の総合力を向上させたいのなら、
審査機関による審査の場は願ってもないチャンスであることはすでに述べた。
その場合、
審査員が指摘をした内容に説得力を持たせるためには、
何らかの代案を出すのがふつうのパターンである。
いくつかの選択肢を提起する方法もあるが、いずれにしても、
「適合していない」ことだけを指摘されても、
企業の側からすると「そんなことにお金は支払えない」なんてことにもなりかねない。
本当に「コンサルタント活動」がだめだとなると、
ISOは永遠に企業にとって役に立つものにはなっていかない。

 企業の側は、審査の場において問題を隠すどころか、
もっと積極的に普段悩んでいることをぶつけてみたらどうだろうか。
「ISOを取得してもう2年経つのですが、製品の品質は少しも向上していかないのです。
どこのプロセスに問題があるのでしょうか」とか、
「投資した審査費用を何らかの形で回収したいと思うのですが、
どんな算定式で計算したらいいのでしょうか」といった内容だ。
審査という短い期間の中で、
受審企業の特殊性や要望に柔軟に対応することができ、
さらに企業にとって有効な問題提起ができる審査員こそプロフェッショナルであると思う。
だから、審査という貴重な機会を、
何も得ることがないまま終わらせてしまってはいけないのだ。