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著者:田坂 広志              光文社 2008年9月25日 発行

「未来を予見する「5つの法則」

証法的思考で読む「次なる変化」(第一話、2チャプターより収録)

この本を読み返してみたいと思ったのは、名古屋で開催された生物多様性多様性条約のCOP10が切っ掛
けで、

何故生物に限らず「多様性」のことが世界の中で大きな関心事に成っているのかの再確認がしたかったこと
に有ります。

著書も数十冊上梓されていますが、彼の若者へのメッセージとしての集大成的なものである感じます。
この本は、日本とアメリカ、そして英語圏で同時に出版されたもので高い評価を受けていると聞いていま
す。

これから日本を背負っていくだろう”志の人”に読んでいただきたいと思っています。
【追記】
 「地球(テラ)へ・・・」という、アニメ作品(DVD)を見た。 超能力を持った新人類が出現
した。

新人類を旧人類が自らの理解を超えた者たちを”排斥し、根絶やしにする”旧人類との戦いの物語だ
った。

この作品は、旧作のリメイク版だったが、描かれている物語は、未来へ”共存していく”大切さを描
いている。

この生物多様性を内包している作品と感じた。私の独断だろうか。



生物の進化においては、「古い生物種」も「新しい生物種」も共に、地上に存続している。
「進化」の本質とは、「多様化」のこと。世界が「多様性」を増していくこと。

 例えば、書物を読むときの「楽しみ」


 古典的価値を持った書物を手元に置き、紙の手触りを楽しみながら、頁を一枚
一枚めくり、読書を進めていく。
 そして、著者の声に深く耳を傾け、遠い彼方の著者と対話し、自己の内面と対
話してゆく。ときに、胸を打つ文章に線を引き、気づきを得たことを余白に書き
込んでいく。そして、一冊の本を読み終えたとき、本の表紙を閉じ、しばし、感
慨にふける。そうした「読書の楽しみ」は、やはり、「紙の書籍」が持つ素晴ら
しさであり、他のものでは代替できないものです。

 もちろん、「電子ブック」においても、ページをめくる機能を持つものも生ま
れています。また、アンダーラインや書き込みのできるものも開発されています。
 しかし、それは、やはり、「紙の書籍」とは、似て非なるものでしょう。
 従って、「電子ブック」がどれほど普及しても、「紙の書籍」は、決して無く
ならない。
 両者は、必ず、共存し、共生し、それぞれに棲み分けていくでしょう。
 それは、実は、生物の世界の「進化」の姿を見れば、明らかなのです。
 ダーウィンの進化論では、魚類から両棲類が進化し、両棲類から爬虫類が進化
し、爬虫類から哺乳類が進化し、哺乳類から霊長類が生まれたとされています。
 そして、その霊長類の中で、猿から類人猿が進化し、類人猿から人類が生まれ
たとされている。
 しかし、その進化の壮大なプロセスを振り返るならば、いまも、地球上には、
魚類も、両棲類も、爬虫類も、哺乳類も、猿も、人類も、存在しています。
 そして、それらの多様な生物種が、この地球上で、共存し、共生し、それぞれに棲み分けているのです。

 もちろん、ときに、ある生物種が、自然に淘汰されて、消えていくことはあり
ます。
 しかし、生物の世界の「進化」の姿は、生物種が、ますます「多様化」を遂げ
ていく方向に向かっているのです。
 これが「進化」の本質です。
 すなわち、「進化」の本質は、「多様化」なのです。
 「進化」とは、単に「古いもの」が消え、「新しいもの」に置き換わることではない。

 昔からある「古いもの」と、新たに生まれてきた「新しいもの」が、共存し、共生し、棲み分けることによって、
「世界の多様性」を高めていくプロセスなのです。
 ときに、幾つかの「古いもの」が淘汰によって消えていくことがあっても、基本的には、共存、共生による
「多様化」に向かっていくのです。そして、その結果、世界は、ますます「豊かな世界」になっていくのです。
 では、これを、市場における「商品の進化」に当てはめてみると、どうなるか。市場において「商品の進化」
が起こるということは、ただ単純に「古い商品」が消えて、「新しい商品」が市場を席巻するということではない
のです。それらは、生物種と同様に、やはり、共存し、共生し、棲み分けていく。
それゆえ、「紙の書籍」と「電子ブック」もまた、共存し、共生し、棲み分けていくでしょう。
 「紙の書籍」は、長く読まれてきた古典的な書物を紐解くときや、言葉を味わいながら好きな詩集を
読むとき、いつも身近に置いて座右の書としたいときなどに適したメディアとして、これからも、
存続していくでしょう。
 「電子ブック」は、検索機能が必要な辞書や事典の情報、常に新しさが求められる最新の情報、一度読ん
だら読み捨てにしていく実務の情報などに適したものとして、普及していくでしょう。
 このように、市場における「商品の進化」とは、大きな視野で見るならば、「商品生態系の多様化」に
他ならないのです。
 「古い商品」も「新しい商品」も、共存し、共生し、棲み分けていく。
 それは、言葉を換えれば、市場や社会が多様性を増し、「豊かな市場」や「豊かな社会」になっていくことを
意味しているのです。